アコースティック・ギターの真実


 

今他のギター、シーガルやイバニーズ事を書いてたら・・・、なんかいつの間にか「コラム」の内容になってきてしまって。そっちより先になってしまいますが、コチラに記録しておきます。

 

 

他でも書いてますが、私は「アコギの構造」−ブレイジングなどは、全然わかりません。トップ・サイド・バックの木の組み合わせなども、シロウト同然です。材質がどうのこうのと論じるのも、好きじゃないし。アレじゃなきゃダメだとか、コレじゃなきゃダメだとか、ハカランダがいいとか(笑)。私がまだ若い頃、ハカランダを使用してるギターなんて、結構あったんですよ。でも、問題は「マイクの前」に持っていった時。実は「アコギの決め手」はここにあったりします。

よくアコギで「いや〜、弾いてみたら、凄くいい音でさあ〜・・・」って言う人、いますよね?

これって、ある意味、おかしいんですよ。

大体アコギって、どこから音が聴こえるの?裏から?横から?

音の大半は「サウンド・ホール」から出るんですよね。じゃあ弾いてる人は、どこの音を聴いてるの?サウンド・ホールの音は、直進してるはず。「ギターの真正面にいて、いい音」ならわかるんですが、横というか上というか。サウンド・ホールからかけ離れてる位置に耳のあるはずのプレイヤーが、弾いてみたらいい音? ほんと〜〜〜??

その位置でいい音だとすると、そこで録音しないの?アコギを録る時のマイクの位置って、サウンド・ホールの上から、ネックにかけてだよね?弾いてる人が「いい音」と思ってるところと、場所が違わない?弾いてていい音なら、どうしてそこにマイクをセットしないの?「ボディの鳴りが腹に響く」とか「マイクの、のりがいい」っていうのは、わかる。エレキギターの音を作る時、アンプの上から音を聴くの?普通はスピーカーの前にいるよね。

プロとして、一番最初にレコーディングした時。私のアコギの音をひろうために、ミキサーの人が私の正面2〜3m離れた位置で、頭の位置をいろいろ変えて、ギターの音が直進してくる場所を探してました。それは、そのギターの「もっとも鳴ってる音」を録るため。そして「そのギターの音」を知るための作業だったんです。
で、結論が「そのギター、まだ鳴ってないねえ〜」だって(爆)。この時はYAMAHAの12弦でした。鳴ってないのは、私も薄々わかってました(爆)。ただピックアップ(この時はデ・アルモンド)で拾っていたので、ステージでは問題なかったんです。最終的にはマイクを2本立てて、「より鳴って聴こえるほう」を採用しました。オーバー・ヘッドで空気感を録ろうともしましたが、それも却下でした。と言うことは・・・アコギの音がそうそう「鳴って聴こえる場所」が、他にあるわけがない・・・ってことですよね。私にとって「アコギのいい音」の基準は「マイクを通した時の音」。ラインなら、「PAに送られている音」。

この「サウンド・ホールから、直進してくる音」は、誰でも確かめられます。誰かに弾いてもらえばいいだけですから。頭を動かすと、すぐ見つけられます。そして「その音」と「自分が弾いてるときの音」の差がわかれば。そして「自分が弾いてるときの音」と「マイクを通した時の音」の差がわかれば。あとは、経験になるんですけどね。

マーティンやギブソンはマイクを通すと、音が激変します。「あの音」になります。ただ「生」では、なかなかそれを体感できません。私はD−45を4本弾いてますが、弾いた瞬間に昇天しそうになったのは、1本だけでした(笑)。あの1本だけは「聴いてる音」と「録音された音」が、ほぼ同一だと思います。この世のものとは思えない、「鈴が鳴るような音」−「シャリーン」とでも表現すればいいんでしょうか。何もしていないのに、まるでコンプをかけたように、あとからあとから絡みついた倍音の波が押し寄せてきます。
J−45も数本弾いてますが、「生」で「あの音」は体験するのは難しいです。ところがマイクを通したとたん「あの音」になります。「どこまで鳴ってるんだ、この低音は?」っていう感じです。「ジェイムス・テイラーの音だあ〜!」みたいな(笑)。まあ、J−45とJ−50の区別は付かないんですけど(爆)。「君の友達」の1発目の「G」の音がします(^^♪。「6弦」1本の音が、まるで直径5cmぐらいに感じられます(当社比!笑)。J−45はコンプをかけると、まるでベース・ギターのような迫力のある低音が出ます。
ところが「生の状態」で低音がありすぎると、録音する時はジャマなことがあります。「出過ぎ」っていう状態ですね。そこのぎりぎりのところにあるのが「名器」であり、誰かの「愛器」になっていることが多いですね。

これは「良い例」でもあり、「悪い例」でもあるんですが・・・。「アダマス」、知ってますよね?アレって、サウンドホールの位置が、他のギターとは明らかに違いますよね。あれはどういう意味だか知ってます?
あれは「アダマス」が考えた、「ボディから、一番効率よく音が出ていく位置」なんです。「あのボディ」から「音が外に出て行く所」なんです。
そしてそれは、普通のサウンドホールよりはるかに上。プレイヤーの耳に近い位置になっています。従って他のどんなギターより、ダイレクトにアコギの音が、プレイヤーに伝わります。それで、アコギをリードプレイなどでガンガン弾くタイプの人に好かれるんですね。あなたの知ってる「アダマス」プレイヤーを思い出してみて下さい。私ははっきり言って「アダマス」の音が嫌いです。あのバチバチいうアタックは、私にとって「アコギ」ではありません。でも「高い」し、好んで使ってる人は離しません(笑)。私の好きなギタリストでは、スティーブ・ルカサーがそうです。たぶん一番プレイヤーの耳に、ダイレクトに音が届く機種だと思います。でもそれが「良い」か「悪い」かっていったら・・・思ったほど使ってる人は多くないですよね?



アコギに関しても、ネットでいろいろ書かれてますよね。話は「情報」としてはいいですけど「結論」は「自分の耳」で出して下さい。アコギの音の良し悪しを「マイクを通した後の音」で論じてる人は少ないと思います。エレアコの音も「PAを通した後の音」で論じなければ、意味はありません。もちろん、それを真剣に考えてる人もいます。

少なくともこの方は信じられます。アコギの音を「アウトプット」−「拡大」することを、真剣にとらえています。とてもよいHPだと思います。ものを順序だてて考えれば、このような方の情報こそ「信じるに足るものである」ことがわかると思います。私ともかなり近い「結論」に達してますし。ギター選びに関しても、順序だてて、理路整然と論じています。筆者の方の意見が良くわかります。

自分にとって「いい音」で、そのギターの音に酔いしれても、「聴く側」に「いい音」が届かなければ、ただの自己満足です。そしてそのすべてが「イコール」になってくれるのが、最もベストな状態。現実にステージの上なら、自分に聴こえてくるギターの音は、「モニター」というスピーカーを通した音。レコーディングなら、スタジオのスピーカーから。私からすれば「自慢話」の論点がずれてるような気がするんですが・・・。

「プロ」は、その「差」を知っています。経験に基づくものです。「鳴ってる」「鳴ってない」の判断が的確です。当然ですよね、それが彼らの仕事ですから。でもアマチュアである我々は、それを「体験する」ことすら、なかなかできません。出来ないはずなのにそれを論ずるは・・・おかしい気がしませんか?

某国産Y社の古い機種。赤ラベルとか緑ラベルとか黒ラベルとか(笑)。

アレがいい!って誰が言い出したんでしょう?
私は思いっきり「???」です。あれをレコーディングに使ってるプロって・・・誰?(笑)。アレが3万円でいい音がするなら、私が40年前に買ったガットギターなど、超オールド?(笑)。「3万円にしては、いい音だ!」っていう理屈はわかります。ただあのギターをくれるって言っても、私はいりません。私はアレを、リアルタイムで使ってきました。レコーディングでは、脆くも惨敗です(爆)。6本の弦の音が、バラバラに聞こえます。確かに「個体差」はあるでしょう。「いいヤツ」もあるのかもしれません。でも使う気は、まったくありません。5千円で売ってても、買わないでしょう。
Y社が「あれ」を基にして、新しいギターを作ったそうです。でも・・・断言します。Y社のギターは40万円オーバーなら、絶対いい音がします。どういうわけか、「40万円」が基準です。30万円では、いい音がしません。たぶん材質選びから、違うんだと思います。オーダーで40万円以上なら、海外製品にも負けません。ミュージシャン達がオーダーしてるのは、コレに該当します。Y社の技術と材質が合致するのは、40万円オーバーからです。

「○○だから、いい音がする!」っていう情報は・・・あてにしないほうがいいですよ。だって機材が同じなら、誰でも「プロの音」が出せてしまうってことでしょう?エレキなら、アンプやエフェクターの「使い方の違い」があるのかもしれません。でも、アコギはそうじゃないですよね?「○○」だったら、誰でも同じ音?そんなはずはありませんよね。「○○」にだって、当りはずれはあるんです。プロはステージで、レコーディングで使うと、すぐバレちゃいます。「ミキサー」という「音のプロ」に聴かれちゃうわけですから。プロは選びに選んだ機材で「仕事」をしています。私からすれば、それは「参考」にはなっても、「絶対」ではありません。「基準」「指標」ではあっても、「必需品」ではありません。安くたって使えるものは使えるし、高くたってダメなものはダメです。プロだって、内緒で安いものを使ってたりします。

少なくともそれは、私の中では「私」が決めます。「ラベルが赤い」からいい音がするんじゃなくて、いい音を見つけたらたまたま「赤いラベルだった」ってことはあります。でも私にとって「ラベルが赤い」ことは、どうでもいいんです。まったく、関係ありません。「私にとっていい音」が基準なだけです。それはコレを見ているあなたにとって、「あなたが基準」になるだけです。他の人の情報に惑わされて、面白いですか?楽しいですか?冷静に自分の耳で聞いて、いい音ですか?アコギはエレキに比べて、判断基準が単純です。うまかろうが、下手だろうが、あなたにとって「いい音」じゃなきゃ、すべては始まりませんよね?

すいません。また理屈っぽくなってしまいました(笑)。理屈をこねくり回しても、なにも始まらないのは、私も重々承知しています。でも・・・おかしいことは、おかしいと・・・せめてここでは、言わせて下さい(爆)。「情報が多い」とゆうことは、良いことでもあり、悪いことでもあるんです。

たまたま辿り着いたHPにこう書かれていた。信ずるにたる情報のようだ。

でも待って下さい。その情報が正しいかどうかは、わからないんです。私は「経験」だけ、書いています。「○○である」じゃなくて、「○○だったことがある」です。あくまで、「参考」です。「○○になるようだ」です。ひょっとしたら、他の人は「違う結論」に達するのかもしれません。ただ私がやったら「こうこう、こういう手順で、こうなった」っていうことです。

アコギは、難しいです。でも、単純です。「Cのコード」をジャラ〜ンと鳴らすのに、プロもアマもそう違いは無いはずです。あとは自分で満足するのか、はたまたプロを追いかけるのか、の違いです。


ここに「Aさん」という人がいます。アコースティック・ギターの達人です。あなたは、聴衆です。今からAさんが演奏するのを聴きます。Aさんに「3万円のギター」をあずけます。とりあえず弦は新品で、ちゃんとしたものを張ってあります。Aさんが演奏を開始します。ウマいです。みごとな演奏でした。さて、聴いてるあなたは、これをどう判断するでしょう?

ちゃんとした人に「3万円のギター」を与えても、ちゃんとそれなりの音は出すでしょう。その「3万円のギター」を手にした瞬間に、弾きやすさ、弾き難さ、高音・低音の出方、音の響き、音の余韻などを瞬時に判断し、それなりの音を出すはずです。普通は単純に「Aさんはウマい!」になりますね。「さすがAさん、3万円のギターでもここまで弾けるのか」と思う人もいるでしょう。そして「3万円のギターでも、いいんだ」ってなっちゃったら・・・どう判断します?
確かにAさんの腕なら、ギターの音そのものを、ある程度のレベルまで引き上げるでしょう。余韻の短いものを、長めに押さえたり、ビブラートで補ったり。低音・高音の無さを、ピッキングの強弱で補ったり。
Aさんに、このギターの感想を、聞きました。

「どうですか、このギター?」
「まあ、値段なりにそこそこじゃない。3万円にしては、よく出来てるよ。」

普通の神経の人なら「だめだな、このギター!」って言わないですよね。特に日本人の美徳もありますし(笑)。Aさんにとってこの3万円のギターは、「自分の腕」でカバーできる範疇にあります。ぎりぎり「守備範囲」にあったってことですね。そうすればAさんは、悪口を言わないでしょう。ただ常識で考えれば、「3万円のギター」が、Aさんの演奏に釣り合うわけはありません。私なんかからすれば「Aさんの腕だと、3万円のギターをここまで鳴らせるんだ。やっぱAさんはスゴイ!」ってなりますが・・・。
これがネットで伝わったとします。

「Aさんが3万円のギターで、素晴らしい演奏をした。」
「Aさんが使った3万円のギターは、とても良い音がしていた。」
「とても3万円のギターでの演奏には、思えなかった。」

結果、どうなるでしょう?ネットでどんな風に伝わると思います?
ラベルが何色だとか、198×年製だとか・・・尾ひれが付いて、きっとこの「3万円のギター」が「一人歩き」をはじめることでしょう。この「3万円のギター」を「鳴らした」のは「Aさんの腕」です。「Aさんの力量」があって、初めて可能なことなんです。現実的に「3万円のギター」が良いはずはありません。「3万円のギター」で良いなら、D−45の立つ瀬がありません(笑)。誰も「ウソ」はついてません。「真実」を曲げてはいません。でも・・・なんかヘンですよね?

ネットの中では、すべての人が「平等」です。経験が半年の人でも、40年弾いてる人でも、プロでも、アマでも、同じ「文字」になります。モノに対して(ここではギターですが)、「良い」「悪い」って書く時には、実は目に見えない「分母」が隠れているんです。

良い   悪い
−−   −−
アマ   プロ

分数に見えなかったら、無理に見てください(笑)。平たく言えば「どこの誰が?」「どういう人が?」ですね。その意見は、誰がどういう状況で言ったの?ってことです。某知恵袋でも、某ちゃんねるでも、この「分母」が見えるわけではありません。おおかたの「分子」部分の意見が揃うと、それが「定説」になってしまいます。時には「それが間違っていても」です。

あなたがこの「3万円のギター」を、「良い音」だと思って買いました。
「良い音だと思って?」
ほんとうにその音を聞いて、買ったんですか?「3万円のギター」を自分で演奏して、自分で聞いて、自分で良いと思ったら、買って下さい。それはそれでひとつの「正解」ですし、ひとつの「真実」です。そしてそれを、ネットに書くのも自由です。もし、あなたが初心者で、何もわからない状態。そんな時はお店の人にでもいいですから、弾いて貰いましょう。あなたがその音に納得できるなら、買って下さい。それが今のあなたの「背たけ」です。私には、それをジャマする権利も、否定することもできません。私に言えるのは、「他の人の意見に惑わされないで!」ってことだけです。

あなたは今、「3万円のギター」で満足しています。そのことを、他人にとやかく言われることはないんです。「あなたにとって良い」は、あなたにとって「すべて」です。これからずっとギターを弾いていけば、「3万円のギター」を卒業する日が来るでしょう。あなたにとっては「記念品」。一生の思い出になるかもしれません。その「3万円のギター」がスタートで、あなたはプロになるかもしれません。その時々に「3万円のギター」について、あなたは「語る権利」を有しています。後輩の為になるようなことを、伝えてあげればいいと思います。そしてそれは・・・「できるだけ、正確に!」です。

現実には、あなたが少しギターが弾けるようになって、ギターのなんたるかがわかってくれば「高いギターの音の威力」は弾いた瞬間にわかります。良いギターが出す「音の魔力」にとりつかれます。耳の位置がどこにあろうと、良い音は良いんです。サウンドホールの正面にいなくても、十分響いてきます。「ギター全体が鳴っている」、そんな感じがします。自分のプレイが、10倍ぐらいうまくなったんじゃないか、と錯覚するぐらい良い音のするものもあります。
それはやっぱり「高いギター」の場合が多いです。むやみやたらなものを探すより、マーティンを何本か試奏するほうがはるかに確立が高いです。もちろんそれ以外の会社のものでも、良い音はあります。とても繊細で美しい音。柔らかく、包み込んでくれるような音。シャープで攻撃的な音。「よい音」はいろいろあるんです。けして一種類ではありません。それをどう判断するかは、あなた次第です。

だいぶ、話が長くなっちゃいましたね(笑)。
「楽器」は、あなたのものになります。あなたが「ご主人様」です。あなたが「良い」と思ってあげればいいんです。それが1万円でも100万円でも、今あなたが奏でる「音楽」にかわりはありません。アコギは他のどんな楽器よりも身近で、手軽に手を伸ばすことができ、その音に酔いしれることができる、素晴らしい楽器です。ネットの話などに惑わされず「自分の耳」で判断して下さい。売り場に並んでいるギター達は、いつだって「ご主人様」−「あなた」を待っています。

 

 

 

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