Columu 56

Guitar Rock Karaoke


 

「Rock」


それは「エレクトリック・ギター」が誕生することにより生まれた音楽です。当初の目的は、単に「ギターの音を大きくしたい!」でした。エレクトリック・ギターができ、アンプができ、実際に音を鳴らしてみたら、当初の思惑とは違った音が出てきたんです。それが「歪み(ひずみ)」です。他のどんなアンプでも、アンプと名の付くものに歪みは許されません。ただし、それがギターにだけは許されることになったんです。その「歪んだギターの音」で、「Rock」が誕生しました。

 

もともと「マーティン社」や「ギブソン社」は、戦前からアコースティック・ギターを作ってました。そんな中で、ビッグバンドにいた人達から「もっと大きな音の出るギターはないのか?」と苦情が寄せられます。アコースティック・ギターのボディの大きさには、限界があります。そこで電気的増幅−「マイクとアンプ」という発想が生まれました。着手したのは「ギブソン社」。試行錯誤の末、ピックアップの付いたギターが生まれました。そこには、ありあまる木材があり、それを使うことにしたんです。

 
ギターが作られた当初。アコースティック・ギター以外で、最も今のギターに似ていたのはピック・ギターです。今で言う「フルアコ」のカタチ。当時あった弦といえば、主流はアコースティック・ギター用。013や012、細くても精々011でした。当然エレクトリック・ギターは、「それ」にあわせて設計されました。013や012のゲージの弦を張っても大丈夫なギターです。従ってこの時に生まれた「レスポール」は、そんな規格を持ったギターだったんです。その生まれでたギターをみんなに弾かせた結果、「もっと細い、楽に抑えられる弦はないのか?」と要求されます。そして010や009の弦が生まれてきました。ところがそこに、とんでもない副産物が待ち受けていました。

 

弦の太さと音のエネルギーは、総量で考えられます。013などという太〜い弦をはって弾いても、音は歪みません。「太い音」が出るだけです。ところが弦が細くなっていくにしたがって、太さによるエネルギーが減る代わりに、弦が細いことによる大きな振動が生まれました。その結果、幸か不幸か「歪む」という現象が出てきたんです。
エレクトリック・ギターの当初の製作目的、アンプの当初の製作目的、このどちらも無視して、「歪んだ音の出るギター」が誕生しました。これが「Rock」の始まりです。

 

これに目をつけたのが、当時の若者達でした。ギターが出た当初、誰にも相手にされず二束三文でお店にころがっていたギター達に、命が吹き込まれます。場末のバーで、ビッグバンドがブルースマン達が出していた音とは、まったく別世界の音。そこに時代を背負う若者が、次々と名乗りをあげます。ジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック・・・レスポール片手に、世界中をRockが席巻します。その後を追うように、テレキャスター・ストラトキャスターが、「Rock」に参加してきます。「新しい使い方」が見つかったんです。

 
そして弦が細くなって初めて可能になった「奏法」が次々生まれてきます。その最も際たるものが「チョーキング」−いわゆる弦をベンドする奏法です。この歪んだ音に、ベンディングは良く似合いました。音も良く伸びます。暴れ狂う3弦の音に歪みとベンディングを加えることにより、若者はギターの音に酔いしれることになります。あっというまに「気持ちいい音」になっていきます。ギターは伴奏の道具から脱却し、メインストリームへ。「リード・ギター」が出来上がります。「アドリブ」「インプロビゼーション」が、ベース・ドラムを従えて、空を駆け巡ります。そして、リッチー・ブラックモア、ジミー・ヘンドリクスなど時代の寵児達が、世界の舞台に飛び出してきます。奇しくもそれは、レスポールが生まれたアメリカではなく、イギリスでの出来事でした。

 

「エレクトリック・ギター」が誕生し、「Rock」が誕生しました。もしエレクトリック・ギターがなければ、Rockは生まれなかったでしょう。
私はラッキーなことに、その少し前からギターを手にしていました。日本ではロカビリーからGSへ。海外からはビートルズとベンチャーズが流れ込み、テケテケ・ギター全盛の頃です(笑)。私が最初に手にしたのは、ガット・ギター。フォーク・ギターさえ買えませんでした。でも、それで良かったんです。私にとってギターは、自分専用のオーケストラだったんです。もともと「歌」が大好きで、歌うことが大好き。まだ世の中にカラオケなんか無い時代です。自分が歌うためには、自分で演奏するしかありません。そのカタチが後のフォーク・ブームに火をつけます。ビートルズとクリームを同時に聞きながら、フォークソングを歌っていました。小学校4年生でギターと出会い、中学生でエレキギターと出会い、高校生でRockに夢中になります。不良の道、まっしぐらです。右手にRock、左手にはFolk。ギターを首にぶらさげて、音楽まっしぐらです(爆)。

 

「エレクトリック・ギター」が誕生し、「Rock」が誕生しました。でも私にとってギターは、単にRockでもなく、Folkでもない。たった一人のオーケストラだったんです。こいつは・・・私の命令には、絶対服従です(笑)。私が歌いたい歌は、すべて伴奏してくれます(爆)。たまに「弾けない!」という理由で、いうことをきかないことはありますが・・・

私にとっては「ギター」=「音楽」なんです。Rockだけ、Folkだけじゃなく、すべての音楽を奏でてくれる楽器なんです。音楽−歌を歌いたいがために、ギターを覚えました。そしてそれは、ベース・ドラム・キーボードにも及びます。ただその原点には、ギターがあります。たまたまギターの理論がわかっていたので、ギターというフィルターを通して、ベース・ドラム・キーボードを覚えました。私の中ではギターもベース・ドラム・キーボードも、すべてはその先にある「音楽」のために存在しています。

 

私にとって、すべての音楽を教えてくれたのがギターです。何でも歌うためには、何でも弾けなければいけません。いつのまにか、「ギターを弾くこと」が先行する時もあります。でも基本、私はボーカリスト。ギタリストだとは思ってないし、どちらかといえばSE担当です(笑)。ギターを含めた、サウンド・エフェクト担当ですね。ギターは大好きですよ。でも、ベース・ドラム・キーボードも好きだし、なによりも音楽が好き。そして、バンドが好きです。そうこうしながら、音楽をギターを学んできました。

 

ところが今は「カラオケ」があります。歌を、曲を、音楽を理解していなくても、歌を歌うことができてしまいます。当然、関心は薄くなるし、興味も薄まります。探究心はなくなるし、すぐあきます。よって音楽自体が、使い捨てになります。読み終わったメールと同じ。クスッと笑って、すぐ削除。音楽と自分の間に、なんのインターフェイスもありません。楽器というインターフェイスに対する欲求が薄まってしまったため、音楽などただの瞬間芸です。今、楽しければいいんです。

ギターを弾く動機がただ単に「面白そうだから」。これでは、長続きするわけがありませんね。しかも

 

「どうすればうまくなりますか?」

「うまく弾くコツはありますか?」

「どのぐらいで弾けるようになりますか?」

 

一見当たり前のように聞こえますが、ここには「ギターを弾く」「音楽をやる」という現実はありません。

 

「どうやったらゲームの点数があがるか?」

 

と同じことなんです。実際の知識も、体の動きも、自分の知恵もまったく不要。ゲーム機の画面の中で、点数が上がればいいんです。

 

 

「ギターを弾く動機」は、なんでもいいんです。アニメだろうが、ビジュアルだろうが、関係ありません。でも、「ギターを弾く」んです。言ってること、わかりますか?

いつまで続くかわかりませんが、今はアニメの「けいおん!」が流行っていて、それを見てギターを手にするコが急増しています。対象がアニメだろうとなんだろうと、一向にかまわないんですが・・・
 

「けいおん!」の唯ちゃんのギターを、ホントに弾いてる人は誰ですか?


「けいおん!」を実際に演奏してるバンドは、誰ですか?


「けいおん!」の作詞・作曲・編曲・演奏は、誰ですか?

 

こんな質問が、1つもでてきません。まさか・・・「唯ちゃん」がほんとに弾いてると思っているのでしょうか?
「唯ちゃん」は、ギブソンのレスポール・スタンダードを持っています。でもスタジオで演奏しているミュージシャンは、ほんとうにレスポールで弾いているのでしょうか?そんな質問すら、ありません。

 

「あれは本当にレスポールの音ですか?」

 

そんな質問があれば、私も安心します(笑)。彼らにとってギターは、音楽のインターフェイスじゃないんですね。「絵」がインターフェイスなんです。「レスポールの絵」が、彼らには「音楽」なんですね。絵の中で唯ちゃんがギターを弾けるように、自分も時間が進めば勝手にギターが弾けるようになると、勘違いしているんです。それが実際にやってみると、あっという間に現実とずれてきます。そうすると・・・

 

「コツはありますか?」

 

になるんですね。
 

私たちが子供の頃には、ビデオなんてありません。インターネットもありません。あるのは数少ないレコードとカセット・テープ。そして年に一度あるかないか、雑誌に載る写真だけです。憧れのギタリストが雑誌に載っている写真は、レスポールを持っています。でもレコードを聴く限り、どう聴いてもストラトの音です。私たちは自分達の持っているつたない知識と数少ない持ってるギターの音から、推理します。いや、意見を戦わせます。いったいこの人は、何のギターをメインにしているのか?その最大のヒントは、自分達の持っている、安い国産のコピー・モデルでした。いつだってそこにある音楽に対するインターフェイスは、ギターだったんです。

 

なにかのきっかけで、ギターを手にします。
ギターを練習します。
仲間が出来ます。
ミーティングをします。
スタジオに入ります。
ケンカをします(笑)。
バンドをやります。
練習します。
ライブをやります。
打ち上げをします(爆)。

 

そのすべてが、ほ〜〜〜〜んとに楽しいんです。「ギター論争」「いい音論争」など、ばかばかしくなるほど、楽しいんです(それも十分楽しいんですけどね(笑)。

30万円のギターを使ってる人は、1万円のギターの人の30倍、楽しいんでしょうか?いえ、そんなことはありませんね。誰の手の中にも同じ、音楽があります。ギターは、手を伸ばせば、いつだって手の届くところにあります。

 

楽しむ!

 

すべては、そこからでしょう。それがあるから、地道に練習していられるんです。そこには、近道もコツもありません。楽しみながら、みんな同じ道を歩くことになります。
歩くのが速い人もいます。遅い人もいます。先に行ってる人もいるし、後ろから来る人もいます。ところどころに「隠しアイテム」−ボーナスのお楽しみがあります。それに気付かない人もいるし、人の分まで使っちゃう人もいます(笑)。1人で歩いてもいいし、仲間とワイワイ騒ぎながら歩いてもいいんです。立ち止まる人もいるし、途中で棄権するのも自由です。途中から参加してもかまいません。どんなに急いで行っても、ゆっくり行っても、誰も文句は言いません。ゴールはありませんが・・・「ハンター・チャンス」は、求めた人にだけ見えます(爆)。

それが・・・ギターです。

 

あなたにとって、最高のギターはなんでしょう?それは・・・

 

あなたの所有しているギターです。

 

では、あなたにとって、至高のギターとはなんでしょう?それは・・・

 

あなたが欲しいと思ってるギターです。

 

ギターは、この2種類しかありません。これがすべてなんです。これが真実です。

迷うことなんかありません。

すぐにギターを手に入れて、楽しんで下さい。

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