Columu 62

力点・支点・作用点


ツユハユウウツ−全然、回文になってませんね(笑)。

みなさんはいかがお過ごしでしょうか?所長のときたです。って、いちいち言わなくても、私しかいませんね。なにやら、某所からのアクセスが急に増えて、あっというまに7000になってしまいました。あまり見られているのも、プレッシャーになるので・・・ほどほどにお願いします。それと・・・「ときたやすし」で検索するのは、やめてください(爆)。

 

さて今日は、昨日見た一文で、

「いまや、GOTOHのペグは、世界最高で・・・」

・・・(笑)

ホント?

何を根拠に言ってるんでしょう?いや、GOTOHさんの悪口を、書きたいわけじゃないんですよ。でも、ちょっと待って下さい。たしかに、GOTOHさんの言うところの、「ペグを作る精度」はすごいのかもしれません。でも「作る精度」と「完成度」は、話が別です。作るのにどれだけ苦労しているのかはわかりませんが、結果それが製品としての完成度を高めてなければ、それは私がよく言う「売り文句」です。みんなが「間違った定説」を言い始める、悪しき風習です(笑)。自社製品の自慢が、誤解を招くことになっているとしたら・・・。ではでは・・・。

 

今日のお題、「力点・支点・作用点」。これはギターができあがる上で、とても大切な要素です。これに「振動・摩擦」が加わると、ギターを作る上での問題点が、ほとんどカバーできます。前にも書きましたが私は今、フェルナンデスのストラト・タイプに、フロイド・ローズのFRT−5 Proというのが付いているギターをいじってます。FRT−5 Proの「力点・支点・作用点」を知りたいからです(後述)。若干、以前のFRT−3より進化していると思われます。その進化の過程・理由が、いったいどういうものなのか知りたいためです。なかなか、それをちゃんと説明してくれる文献・文書が見当たりません。しょうがないので、自分で検証してます。そしてそれと同じことを、「ペグ」でも考えてました。

 

まず「ペグ」の起源。これはバイオリンに代表されるクラッシック楽器の「糸巻き」だと思われます。多分英語で言えばどちらも「ペグ」だとは思いますが、まぎらわしいので「糸巻き」と呼んでます。

その基本構造を簡単に図にすると・・・

これは、楽器の正面から見たものと考えて下さい。バイオリンなどには、「ギア」−歯車構造がありません。「糸巻き」は、「摩擦」によって静止します。弦で引っ張ると、シャフトに力が加わります。しかし、シャフトは何らかの力によって、そこで止まる必要があります。穴にシャフトが入っているだけなので、単純に考えると「押し込む力」−「面による摩擦」で止めていそうなものなのですが、実際はそれだけではありませんね。

こうなりますよね。弦の力により引っ張られたシャフトは、ヘッドに押し付けられ「摩擦」を生みます。バイオリンの場合は、横向きです。「力点・支点・作用点」−いわゆる「テコの原理」によって、力点・支点の力を、作用点側に伝えます。そしてそれは、作用点にも摩擦を生みます。弦の大きな力を、作用点側では小さな力で支えることが出来ます。そして、糸巻きの力と弦の力が、1対1では困りますよね。より小さい力で、人は糸巻きを回すことができます。実際に私たちが使うペグには、「台座」があります。台座部分を加えてみますね。

これが台座が加わった時の、力の分散だと思います。「作用点」として作用するところが、増えますね。より力が分散されて、「弦が引っ張る力」を拡散させています。ところが、この構造というのは、「クリアランス」−いわゆる「遊び」があるから起きる現象なんです。この「遊び」が無い構造だと・・・

上の2つの図には「クリアランス」−シャフトと本体の間に、いわゆる「遊び」があることによって成り立っているように見えます。ところがこの図には、その「遊び」がありません。シャフトと本体が、密着しています。そうすると、シャフトが受けている「弦が引っ張る力」は、ドコに行ってるんでしょう?まずは、密着してしまったヘッドに加わりそうです。そうでなければ、「支点」の位置が変わります。力点と支点が離れれば離れるほど、作用点には大きな力が加わります。重い石を動かすテコの原理ですね。そして作用点になるだろうと思われる位置には・・・前出の図より、過大な力が加わることになります。ではこれを、「ギターの構造」に置き換えてみましょう。

こんなカンジですよね。これが「普通のペグ」の構造です。ヘッド表面にはブッシュが打たれ、より強度を確保しています。そしてシャフトとブッシュの口径には「遊び」があります。実際には台座があってギアがあるのですが、ギアは後回しにして(笑)。

先程と同じように、「力点・支点・作用点」を表示しました。どうでしょう?バイオリンと比べてみると、より強い力を、より拡散させる方向に進化したように見えます。これの「理想」は、「ブッシュの中心にシャフトが位置すること」です。この構造を、もっとも効率よく使えるからです。ただ現実的には、「中心に位置させる」のは、難しいですね。

私はフォトラトのペグ取り付けの項目で、「仮止めしてから、弦が引っ張るほうにシャフトを押し付けて・・・」と書きました。そしてそれは「消極的な方法」であると。つまり「仮止め」してシャフトを倒すのは、弦の力が加わってブッシュに当たるのを、先に人間の手で行うってことなんです。そしてそれから、裏を本止めする。シャフトを中心に設定できないので「力点・支点・作用点」を先に作ってしまうんですね。そうすることによって、本来ペグの持ってる能力に、限りなく近づけようというものなんです。そして「このペグ」の能力は、「遊び」によって作られています。

こちらは、ブッシュとシャフトに「遊び」が無い状態。みなさんが「精度がいい」と言っているGOTOHさんの構造です。どこが違いますか?そう、「支点」の位置ですね。シャフトはブッシュに押し付けられ、支点の位置が、遠くなります。そうすると、どうなるでしょう?作用点に加わる力が、大きくなりませんか?大丈夫ですか?(笑)。本来「力点・支点・作用点」で消えていたはずの力が、ヘッドに掛かりませんか?

もうひとつが、こちら。今度はヘッドの裏側から見た状態。ペグのカム構造を、正面から見たものです。カバーの付いていないタイプや、クラッシックギターの3連などは、実際に見ることができます。

実はこの2つのギアが噛み合う部分にも、「遊び」が想定されています。上の図が「普通のペグ」です。弦による力が加わっていなければ、「遊び」があり、歯車は完全には噛み合っていません。逆に言うと、弦による力が加わっていなければ、噛み合う必要はないんですね。そして弦の力が加わると、

本来はこの時点で、初めて「噛み合う」わけです。そしてまたもや「力点・支点・作用点」が出てきます。これは、シャフトの加わっている「弦が回す力」を、より小さな力で人間が回すためのものです。でもその前に・・・

この図の裏側、わかりづらいかも知れませんが向こう側に向かって、シャフトは伸びています。前段で見ましたが、「遊びのない構造」では、「普通のペグ」より遥かに大きい力がこの歯車部分に生じています。前段で「台座に掛かっている」と表現した力のことです。まったく遊びがなく、その歯車に掛かった力が、そのまま回転運動として、人が回すところに伝わっていきます。

 

「ええ〜〜〜っ、でもGOTOHのペグは、スムーズに回るよ!?」

 

・・・(笑)

GOTOHさんはちゃんと自分で申告してますよ、ギア比を変えたって(笑)。「普通のペグ」と同じフィーリングになるように、歯車の数を変えたんですね。でもギア比を変えたからって・・・ヘッドに掛かる力が消えるわけではありません。

 

そしてもうひとつ。GOTOHさんのマグナム・ロック・タイプは、ブッシュが本体にねじ込むタイプではありませんか?シャーラ・グローバー・タイプもそうなんですけど。そうすると、「支点」はどこになるのでしょう?シャフトとねじ込みブッシュには、「遊び」はありません。弦が引っ張っていることによって生み出している力は、いったいどこに掛かっているのでしょうか?。これが「GOTOHさんの生み出した精度」の結果です。少なくとも「普通のペグ」より、はるかにヘッドに負担が掛かってるように思われます。

また先程書いた「消極的取り付け」に関して。シャーラ・グローバー・タイプは、本体が1個ずつの取り付けです。でも、もうひとつ、ペグのタイプがありますよね?そう、クルーソン・タイプです。クルーソン・タイプって・・・どうなってます?3連でも6連でも、繋がってますよね?あれ、どうしてなんでしょう?賢い方はもうわかりますよね。1個のペグをブッシュの中心に位置させれば、他は自動的にその位置にセットできるんです。理屈がわかりますか?3連なら2個、6連なら1個、ピッタリ決めると、他はそれにあわせるだけで、中心に位置させることが出来る、っていう構造なんですね。

この「遊び」の構造と、セッティング方法。これはGOTOHさんより、劣っているのでしょうか?私には、とてもそうは思えません。考えれば考えるほど、「普通のペグ」は理に適っているようにみえます。エレキ・ギターは約60年、アコースティック・ギターは約100年。誰しもが「GOTOHさんのようなこと」は、考えたハズです。でも、誰もやりませんでした。なぜなんでしょう?シャーラやグローバーなら、とっくにやっていてもいいようなもんなんですが。とすれば先人達は、「やる必要がない」と判断したのでは?

GOTOHさんが自社製品を宣伝するのに対して、「いや、違う!」と「もの言い」を付けるメーカーは、普通いませんよね。だって、すべてのギターが、GOTOHさんになってるわけではありませんから。オーソドックスなギターは、クルーソン・タイプあるいはシャーラ・グローバー・タイプが普通です。なぜなんでしょう?安いから?いえいえ、すでにGOTOHさんの製品は、値段がかなりリーズナブルになってきています。先進的な値段の高いギターは「GOTOHのペグにウィルキンソンのアーム」を、売り文句にしています。それにたいして、いちゃもんを付ける人は、いないと思います。でも・・・ですよね(笑)。

ただし、GOTOHさんが昔ながらに作っているシャーラ・グローバー・タイプ、クルーソン・タイプは、やはり「昔の設計」です。「自社もの」と「コピーもの」を、作り分けています。私は、ある程度確信犯でやっていると思ってます(笑)。ペグの遊びの無さが、ヘッドに負担を掛けるとしても、新しいギターなら壊れない。それをわかっているんだと思います。上のような状態で、スタジオやステージで、ヘッドをペグをコツンとぶつけたとします。昔ながらのペグは、ペグ自体が壊れる、あるいは曲がることによって、ギターを守ってくれます。でもGOTOHさんのペグは、すべての力がヘッドに掛かっています。どうなるんでしょうねえ〜(笑)。「オールド」には、止めておいたほうがいいような気がします。

もうひとつ難しい話があるんですが、それは止めておきます(笑)。凄くくどい内容ですから(爆)。ヒントは、レスポールのヘッドって、根元と先の厚みが違うんです。先に行くに従って、薄くなります。そしてヘッド・テーパー−いわゆる天神角。ヘッドの角度。角度があって、厚みが違っていると・・・。上の図を見て、想像して見て下さい。けっして、クルーソンやシャーラ・グローバーは、GOTOHさんより劣っているものではありません。どちらかといえば・・・こっちのほうが、「完成品」のような気がします。たぶん、「振動の伝達」を考えると、マグナム・ロックはとても効率がいいのかもしれません。だって・・・弦の力がペグに掛からず、みんなヘッドに掛かってるわけですから(笑)。

 

ついでと言っちゃなんだけど・・・「ウィルキンソンのアーム」も書いちゃおうかな(笑)。宿題っていうか、自分で考えてね。まだ私は検証中で、よくわかっていないから(爆)。

 

フェンダーのトレモロ・アーム

フロイド・ローズのアーム

ウィルキンソンのアーム

取り付けネジの位置から考えた、「力点・支点・作用点」の位置はドコ?

取り付けネジの位置から考えた、ブリッジの正確な位置はドコ?

取り付けネジの位置から考えた、アームの稼動領域ってどうなってるの?

ブリッジとテールピースにあたるところの弦の角度は、どうなってるの?

各アームの標準的な水平位置って、どこ?なにが基準?

取り付けネジの位置って、どうやって決めてるの?

プレートの長さに決まりがあるの?基準は何?

ブリッジ位置があってれば、取り付けネジの位置はどこでもいいの?

これらが変わると、音が変わるの?どんな風に?

各アームの、ベストなブロックの重さは?材質は?

AKB48は、モーニング娘。より可愛いの?

地下鉄は、なんの省略?

あれ?なんかちがうな??(^O^)/

 

・・・(笑)

GOTOHさんとウィルキンソンって、根本的なモノの考え方が似てるんだよね。共同開発なのかな?それともOEM?ウィルキンソンのアームがいい!って言われてるわりには、今さんのモデルは、完全固定だし、コンバットさんも基本セッティングがベタ付けだし。なんか・・・どっかが・・・なのかな?(笑)。それが、トレモロ・アームやフロイド・ローズを見てると、解消できそうな、説明できそうな・・・。でも、振動伝達の効率がいい・・・って、GOTOHさんと同じ結論?(爆)

 

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