Columu 76

「マニュアル」


(笑)
見ただけで、ゲンナリする単語ですよね。
今日は、それの話です。
 
 
最近G5をいぢり続けています。「なにか見本を・・・」って考えると、60年代から80年代の曲・ギタリストがターゲットになりやすいです。個性的であり、源流であります。そういう曲を弾いてると、とても楽しいです。ただこれが、ココを見に来る若いコに通用するのかどうかは、はなはだ疑問でなんです。ヘタをすると、私が楽しくやっていることの意味さえ通じてないかもしれません。
 
60年代から70年代にハードロックが流行った頃、誰ともなく「源流を辿れ」と言われました。誰が言い出したのかはわかりませんが、ブルースまで戻るように言われました。今目の前にあるハードロックの元になったモノはブルースなので、そこからスタートするようにとみんなが言っていました。意味が判っても判らなくとも、ブルースが好きでも嫌いでも、とりあえずは聴いてみました。それによって「ルーツを辿る」ことを教わり、「ギターの源流」がブルースやフォークにあることも知りました。音楽は「目の前にあるもの」がすべてではなく、「元があるから今がある」ことを教えられました。
 
それが今は、そういった風潮はありません。言う人も少なくなりました。

その結果、私にはどうにも「弊害」に見える、いくつかの現象が起きるようになりました。
 
例えば「チューニング・メーター」です。
私達の頃はチューニング・メーター(以下チューナー)など無く、「音叉」「ピッチパイプ」あるいは「ピアノの音」でギターをチューニングしていました。当然不確定な要素なので、ギターを「チューニングした後」に、ベースやピアノと合わせてみて、はじめて「チューニングが合っている」と認識していました。1人でギターを弾くならともかく、「バンド演奏」における「チューニングが合っている」は、「全員が揃ってナンボ」でした。当然、チューニングの「うまい・へた」もあり、「クセ」もありました。私は「高めにチューニングする癖」があるのを、自分で認識しています。ピアノの442に引きずられるんですね。それでピアノのチューニングが「高め」であることを知り、チューニングが違うことによる「アンサンブル」があることを知りました。また5Fの実音チューニングの他に、7Fや12Fのハーモニクスによるチューニングを併用することで、より正確性を高める努力をしてきました。
 
ところが今は、最初から「チューナー」です。「初心者セット」を買うと、チューナーが付いてきます。一応「教則本」に「チューニングのしかた」は書いてありますが、それを読む人はいません。「読まない」のは勝手なんですが・・・「チューニングの原理」までスポイルしています。「開放弦の音は何?」「5Fの音は何?」「7F・12Fの音は何?」「ハーモニクスって何?」というのが無く、「メーターに合わせる」がスタートになっています。
 
ところが・・・これはしょうがないとも言えるんです。なぜなら今は「チューナーがある」んですから。今の世代のコにとっては、
 
「チューナーがあるのが当たり前。」

「チューニングはチューナーでするもの。」

「針(あるいは表示)が合えば、チューニング完了。」
 
携帯電話が当たり前にあるのと、なんら変わりません。彼らは不思議だとも思ってないし、それが「当たり前」の世代なんです。逆に、
 
「機械で合わせられるのに、なんで人力でやるの?」
 

なんです。その結果どうなるかというと・・・
  
「チューナーの表示が安定しません。どうしたらいですか?」
 
「チューナーでは合っているに、音が違うような気がします。どうしたらいですか?」
 
「ボクのギターの5弦の音は、6弦より低いです。メーターでは合っています。」
 
(笑)
などと、とんでもない質問が乱れ飛ぶようになります(爆)。彼らにとって「チューナー」は「絶対的な機械」であり、「チューニングの原点」。チューナーの誤動作などありえないし、自分にも責任はありません。しまいには、
 
「ギターが安いからですか?」(爆)

そこには「ギターの音を合わせる」という動作ではなく、「チューナーでチューニングと言われる作業をする」という事しかありません。ギターが「楽器である」ことすら、忘れさられています。
 
 
私は以前のコラムで「チューナを使えるようになって下さい」と書きました。でも、「普通にチューニングが出来るようになって下さい」とも書いています。私がチューナーにこだわるのは、ひとつには「レコーディング」が視野にあるからです。昔は「オープンデッキ」によるものなため、「ワウ・フラッター」があったり、「電圧低下」があったりしました。なのでマスター・マルチの頭には、基準信号が入っていて、別の日や別の場所でレコーディングを連続して行うためのノウハウがありました。なのでお約束として、「できるだけチューニングを正確にする」というのがあり、「チューナーの440」が、大事な決まり事でした。ただそれでも、結果的に「ズレて聞える」「ズレが気持ち悪い」というのがあり、最終的には「人間の耳」が最優先します。これはギターに限らず、全ての楽器で起きる現象なので、音楽を仕事にしてる人にとっては「当たり前のこと」なんです。
 
「チューニング」−それはギター1台であっても、必要なこと。「隣り合ってる弦」とピッチがあっていなければ、キモチ悪いサウンドあるいは調子のはずれたものにになります。
そしてそれが「バンド」であれば、「全員共通のフォーマット」になります。これはロック・バンドであろうがオーケストラであろうが同じ。隣にいる人と音が合っていて、それが全員であってなければいけないものです。いくらチューナーであっていようが、関係ありません。「ズレているように聞える」場合、楽器本体に問題がある場合もあります。でも今は・・・「チューナーがそこにある」時代なんです。
 
これを今のコに言って、わかるはずがありません。自分で気が付いてもらうしか、方法はありません。なので、言ってもムダです。ひょっとしたら、私がココでこんな風に書いてすら、意味がわからないかもしれません。「チューニングが耳でできないこと」=「A(ラ)の440を判別できない」なんです。当然「耳コピ」なんて、「神の領域」でしょう(笑)。
 
 
もう1つ、言っておきたいことがあります。
今の日本の音楽−特に若いコ向けの曲に「クランチ・サウンドのアルペジオ」や「クランチ・サウンドのカッティング」が良く使われています(ブラッシングがどうのこうのって言わないでね(^・^))。「アンプ・シミュレーター」を使った音ですね。サンズ・アンプやPODの出現により、「耳障りのいいクランチ」が手軽に作れるようになりました。バンドのアンサンブル上、「音を埋める」あるいは「音の壁を作る」には、非常にお手軽なサウンドです。多少演奏がヘタッピでも、それなりに聞えるアンサンブルを作れます。なので・・・
 
「音楽製作」をしている現場の人達も、これで「逃げる」ことを覚えました。バンドがいてギターがいれば、本来は「そのギタリストの力量」が問われました。ギター・アンプで「良いクランチ・サウンド」は、一番難しいといっても過言ではありません。古くから洋楽にはあった「クランチ」なんですが、実際に自分でやってみると、これほど難しいサウンドはありません。なので昔の邦楽には「クランチ・サウンド」が少ないんです。
それがアンシミュによって、誰でも使える・誰でも作れるようになりました。ろくにギターが弾けなくても、この音でジャガジャガやってれば「それなり」に聞えます。なので「音楽製作をしている現場の人達」も、これを使って逃げる事を覚えました。「お手軽」「簡単」「それなり」。出来上がってくる音楽が、楽しいと思えます?(笑)
 
そしてその結果「リード・ギターのないバンド」「リード・ギターの入っていない曲」が氾濫するようになりました。ジャガジャガ弾いてそれなりなら、ムリをする必要はない、ってことです。ましてや難しいことをしようとすると録音時間が長くなり、経費が増えます。そこで起きることは「レコーディングで何も学ばないミュージシャンの氾濫」なんです。学んだことは「アンシミュの使い方」(爆)。ドラム+ベース+ジャガジャガ弾くギター+ピッチの悪いボーカル。出来上がってくる音楽が、楽しいと思えます?(笑)。
 
なので、これを勘違いしたコ達が、ライブハウスではギターをジャガジャガ弾いて、ワケのわからない「オリジナル」を歌います(笑)。当然それは「クランチ・サウンド」とは程遠い、「ギターを掻き鳴らしただけの音」。歌が聞えないとか、ボーカルの音域と被ってるなんていうのは、お構いなし(爆)。かといって、「爆音で自己満足のギター・サウンド」がくるわけでもありません。これならまだメタル君のほうが、未来が明るいです。うるさくとも(笑)、自分のギター・サウンドを考えてるし、リードギターも弾きます(爆)。でも・・・今のコにとっては、これが普通(笑)。
 
 
今日の話は「ゆとり世代のコ」に向けたものではなく、それ以前にいた普通の人達に「言ってもムダです!」ってことを伝えたいだけ(笑)。

 

「水分はペットボトルで取るモノ」

「電話といえば携帯」

「情報はネットで見るモノ」

「音楽はYoutubeで聞けば、タダ」

 

懇切丁寧に教えても、ムダです(笑)

これが「ゆとり世代のコ」にとっては「あたりまえ」。

なんの不思議もないし、疑問にすら思いません。

「あたりまえ」なんだから、悪気はないし「普通」。

どんなお説教をしたところで「???」。

話は、すれ違うだけです。
 
教則本に「チューニングメーターを使って、チューニングしましょう!」って書いてあります。これは今のコにしてみれば「命令文」。マニュアルである教則本に、チューニングはチューニングメーターでしろ!って書いてあった、っていうことなんです。「must」なんですね。ところが書いた人も我々から見ても、これは勧誘(笑)。「Let's Try」ですよね。しかもその前に「人力チューニング」があることを知っています。でも今のコにとっては、マニュアルに書いてあることがすべてなんです。逆に書いてないことは「無い」ってことなんですね。「判らないことは、先人に聞け!」なんて、マニュアルには書いてありません(笑)。従って「そういう行為」もしませんし、「わからないこと」自体「無い」ことなんです。だって、マニュアルには書いてないんですから。マニュアルを読んで「わからない事」があるっていうこと自体が、ありえないことなんですね。そしてそれが「普通」なんです。
 
なのでこういうことを言っても、怒るどころか「キョトン」としています(笑)。「先人から教わる」「先輩に怒られる」っていうのは、マニュアルには書いてないことですから。なのでこれを読んでも、ピンときてないと思います。イライラしてるのは、私達だけです(笑)。なので最善の防止策として、「知恵袋を見ない」っていう行動に出ちゃったんです(爆)。
 
ここ数ヶ月、ほんとに「知恵袋」の質問が、「アホかっ!」っていうものばかり。完全に「ゆとり世代」に乗っ取られてます(笑)。彼らは「知恵袋で、質問しよう!」って書いてあるマニュアルに沿って行動していますが、それが「誰かにモノを教わる」っていうことだとは思っていません。でも・・・それだけじゃないコがいるので・・・なんとかしてあげたい!とも思うんです。なにもしないと・・・どんどん日本の音楽が・・・(爆)。
 
「余計なお世話」なのでHPです(笑)。ここにたどり着く知恵を自分で搾り出せるなら、きっと何かを感じてくれることでしょう。おおかたのコがギターを弾いてると思いますが・・・
 
「ココには、プロが何人も来てるんだゼィ!!」

(笑)
だからって、私が書いてることが正しいってことじゃないよ。みんなそれぞれに「自論」があり、私と意見が食い違ってることもあります。でもそれを踏まえて・・・楽しく遊ぶ場所(笑)。みんなで「音楽」で、「ギター」で盛り上がろうよ!っていうところだから。
 
だからみんな−ドッチの人も、イライラしないで下さいね(笑)。「そういうこと」なんです。私は「イライラの原因」は、排除することに決めました(爆)。しょうがないんです。「時代が違う」「基準が違う」んです。私達は「マニュアルの無い道」を歩いてきました。そしてなぜか「マニュアルを作らなきゃいけない世代」になっちゃったんです(笑)。私達にとって
 
「マニュアルに書いていないこと」=「常識的なこと」「わかりきった事」
 
なんですが、今のコにとっては、
 
「マニュアルに書いていないこと」=「何も無い事」「何をしてもいいっていう事」
  
 
なので・・・
 
お気楽にやりましょう!
 
お茶を飲みながら・・・
 
ゆっくり「ギター談義」「音楽談義」を交わしましょう。
 
年齢も性別もプロもアマも関係なく。
 
話が通じる同士で、話せばいいだけのことです。
 
それが・・・ココです。

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