Columu 91

ボカロ包囲網、発令!!


何やら、ネットの中が騒がしい。それもそのハズ。「違法DL法」に次いで、「ACTA」なる法律が行使されようとしている。これの最初のターゲットになったのが・・・「ボーカロイド」。
 
この「ACTA」なる法律。発令はたしか1年前ぐらいだったはずである。もともとは「模倣品・海賊版拡散防止条約」−「模造品の取引の防止に関する協定」と称され、「違法ジェネリック医薬品の取り締まり」がスタート。ただし、読んで字のごとく、「何にでも当てはめられる」厄介な条約である。その機構数カ国−日本・韓国・イギリス・アメリカ等−が次なるターゲットにしたのが「Youtube」と「ニコニコ動画」。そしてその象徴として「ボカロ」−「ボーカロイド」作品を潰しにかかったきたのである。加えてそのアシストをするかのように、ボカロの発売元である「YAMAHA」(開発・製作は、クリプトン・フューチャーですが)が、「VMP」−「ボーカロイド自主制作コンテンツ出版管理機構」なるものを立ち上げた。

 
そしてこれに「ボーカロイド校内放送禁止」が重なっているのである(笑)。中・高校生からしてみれば、これら一連の動きが連動しているように見えてしまった。自分たちの「文化」が潰されるような錯覚を覚え、半狂乱になっている。どれもこれも「根本的」には、何も間違ったものではない。まあ今回、「違法DL法」は別にしよう(笑)。まずは「ACTA」である。
 

 
「ボーカロイド」(以下ボカロ)は、皆さんご存知だと思います。当初の開発意図とは違った部分で、若者の新らしい文化が芽生え、今やそれが海外にまで波及しています。私もこのボカロの技術は、すごいと思います。今まで皆が夢にまで見てきたソフトが、ついに目の前に現れたわけです。これは当初、DTMの作業における「仮歌」を担ってくれるものでした。それが若者の手により、一人歩きを始めました。「初音ミク」はあっというまに広まり、ニコニコ動画(以下ニコ動)は百花繚乱。初音ミク以下、各種ボカロが多数アップされました。
開発したクリプトン・フューチャー及び販売元であるYAMAHAも、このボカロに関しては非常に寛容であり、使用制限がなく、キャラクターの使用も大きく認めていました。そして日本の音楽の1つのジャンル「ボカロ」となり、CDが発売されるに至りました。ただこれにより、「著作権」が大きくゆがんでしまいました。いろいろな問題が「同時多発」しているので、問題点の説明も飛び飛びになるかも知れませんが、1つずつ理解してして下さい。
 
まずは「ボカロ楽曲」の作者達は、「著作権の信託」など、どこふく風なわけです。通常「楽曲」は、「出版社」と契約すれば、自動的に「JASRAC」の信託となります。もちろん希望すれば、「JASRAC以外に信託」することもできるし、信託しないまま発表することもできます。ただし通常はJASRAC以外に信託すると、著作権料の回収が難しくなります。ボカロを「自主製作盤」として出せば、「料金」はすべて作者の入りますが、広範囲に売れ始めると、その回収が難しくなります。なので「CDの発売元」は、これを嫌います。
ところが実際にJASRACに信託すると、著作権料は販売金額より、はるかに低くなります。普通の「著作権料」の支払になります。また「料金を取る」ことを良しとしない、フリーな作者も沢山います。「大人」から見ると「金の成る木」が・・・勝手に生えてるわけです。
 
そして「ボカロ作者」の、著作権に対する「意識の低さ」です。ボカロを使用し、「自分の楽曲」を「自分の演奏」で発表するなら、なんら問題はありません。ところが「他人の楽曲」を「他人の演奏」で発表する人が、後を断ちません。これは「違法」です。楽曲も演奏も「著作権フリー」であるなら問題はありませんが、そう都合よくそんなものがあるはずありません。Youtube(以下ようつべ)もニコ動も、「包括契約」によって、料金は支払います。ところがこの契約だと、料金は微々たるものです。アップされた画像の形態は、「歌ってみた」「弾いてみた」となんら変わりません。実際に覗いてみれば、「歌ってみた」「弾いてみた」の量は、たいしたものではありません。新しい表現方法として、あって然るべきものです。ただ、このボカロを自由に使わせたYAMAHAの責任は、痛し痒しです。「違法を増長した」とも言えます。なので、「なんらかの規制」が必要になってきました。それが「大きなカタチ」として現れたのが、「ニコ動からようつべへの、転載禁止」。ようつべは、外国の企業です。それに対してニコ動は、日本の企業。まずはようつべからボカロを締め出し、「ニコ動内で管理する」方向に向かいました。ところが・・・
 
いままで自由に「ボカロ」を使っていた人からすると、「自分の楽曲」「自分の演奏」になってしまったら、あっというまに「ものすごく高いハードル」になってしまうわけです。「既存の曲をミクが歌うから面白い」という人も多数います。ただしその楽曲の正統な作者、及びJASRAC・出版社からみれば、限りなく違法に見えます。ニコ動から支払われる料金では、とてもガマンできません。ましてやミクに使われることに対して「承諾していない改編」と感じる人もいます。そこで出てきたのが・・・「ACTA」という切り札でした。
 
「VMP」−「ボーカロイド自主制作コンテンツ出版管理機構」は建前として、あくまでも「ボカロ作者に対するスムーズな著作権料の支払」です。それに対し「ACTA」は、まったく正反対の「規制」。まさに「からめ手」で、「ボーカロイド包囲網」がひかれたんですね。YAMAHAにしてみれば、ボカロの繁栄は万々歳。でも「違法を増長」していることも確かです。「ACTA」はようつべ・ニコ動に対して、なんらかの手を打ちたい。いままでは突破口を見つけられずにいましたが、これで作戦開始です。
 
「VMP」は、国内の機構。それに対して「ACTA」は、世界規模の包囲網です。残念なことに中国が居ないので、決定力には欠けます。でもようつべに圧力をかけるには、充分な参加国。まずはようつべからボカロを締め出して、ようつべを「ACTA」の影響下に置く必要があります。ご存知のようにようつべは民間の営利企業です。いままでも著作権問題に関しては、各国と話し合って進めてきました。なので、ようつべに強い態度をとることができるところがなかったんです。違法にアップされたものに対し、削除にも応じます。なのでようつべに強い態度のとれるなんらかの「機構」が必要でした。そしてこれの切り札が、「ACTA」。日本の「違法DL法」と足並みをそろえて、まずは「ボカロ取り締まり」がはじまりました。
 
もう1つが、「校内放送禁止」(笑)

これは・・・教育委員会がJASRACやACTAと繋がっているとは思えません。どちらかといえば、「学校」−「教師の好み」だと思います。
ほとんどのものがそうなんですが「教育」に使用されるものは、著作権の対象外、あるいはかなり軽減されます。校内放送で何かが禁止されるとすれば、ボカロもAKBもK-POPも、同一レベルで話がでるはずです。ところが、ネットの盛り上がりを見ると、禁止されているのは「ボカロ」のみ。そう考えると、ただ単に「教師が嫌いなだけ」っていうのが真相だと思います。
ただこれが「違法DL法」「VMP」「ACTA」と重なったため、子供たちから見ると「ボカロ撲滅運動」に見えたんですね。校内放送でボカロを禁止しても、さして影響力はありません。たまたまネットで子供達が「うちもだよ!」っていうネットワークが広がっただけ。「ロックはダメ!」「歌謡曲はダメ!」なんていうのは、昔からあったことです。それがたまたま「ボカロ」だっただけ。今回は、「タイミングが悪い」としか言い様がありません。

 
 
そろそろ・・・子供たちにも「正しい著作権」を理解させないとダメな時なんじゃないですかね。彼らは「仕組み」としての著作権は知っていますが、実際に金のやりとりを知りません。前にも言いましたが、「音楽はタダ」だと思っています。音楽で収入を得て生活している人の「正しい姿」を知りません。自分で金を稼いでるわけではないので、頭では理解しているつもりでも、ピンとこないんでしょね。
 
なのでこの「違法DL法」「VMP」「ACTA」が全て機能しても、「ボカロ」が無くなるワケではありません。みんな、そこが理解できないようです。私が怖いのは「ボカロ」を、大人のコントロール下に置こうとする考え方です。みんなが面白がって広がったボカロ。子供たちは、これで儲けようとは思っていません。ボカロでお金が得られなくても、彼らは損をしたと思ってはいないでしょう。なのに「VMP」です。お題目はりっぱですが、子供の遊びに大人が口出しをすると、大概その文化は潰れます。ネットという力を得た子供たちの文化を、大人の手中に収めようとしています。そしてそれの逆の出口を、「ACTA」が塞いでいます。「VMP」の傘下に入らなければ、「ACTA」が潰しにきます。そしてそれを取り締まれる「違法DL法」があります。ようつべ・ニコ動を、保存しただけでアウト。ただ現状のフリーな状態では、正確に取り締まれません。なので「ボカロ撲滅」に見えるような動きをしています。
 
以上のような内容なので、あなたの周りの人に教えてあげて下さい。これによりボカロを撲滅しようとしているわけではありません。「ボカロ」は民間営利企業の「商品」です。ただ、「自分の楽曲」「自分の演奏」でボカロをしようと思ったら、ハードルはかなり高いです。完全にDTMができないと、作品が作れません。でもようつべ・ニコ動には「包括契約」として、「歌ってみた」「弾いてみた」は許容範囲とされています。そのための使用料は、「支払われているもの」としてきました。でもカバー曲には「Coverと明示しろ!」となり始めました。それだとイザというときに「Cover」で検索すれば、一挙に削除できるからです。そこを許可しておいて、今更「ボカロ狩り」っていうのは、私でも納得できる話ではないんですが・・・
 
とはいいつつも、私の周りには「印税生活者」が多数います。みんな自分の作品を売ってナンボの生活。これに正統な対価が支払われないと、音楽界はまともな活動ができなくなります。でもこのシステムを率先して崩してきたのは、レコード協会でありJASRACであり、今の音楽業界です。「CDが売れない!」でもお話しましたが、こうなってしまったのは、音楽業界そのものの体質が作り上げた現在です。音楽・映像をコピーする道具を売りつけておいて、コピーしてはいけないって・・・どう考えてもおかしな売り方ですよね。
音楽を作ってる人には、罪はありません。音楽を「商売」にしようとした結果です。商業活動である限り、金儲けは悪いことではありません。それより1発ヒットで一攫千金を夢見られる業界のほうが、私はいいと思います。私たちのころで言うと「夢にまでみた印税生活」です(笑)。ただそれが「良いモノを作ると売れる」ではなく、「売れればなんでも良い」にしてしまったのが今の音楽業界。バブルがいつまでも続かなかったのと同じなんですが、まったく反省がありません(笑)。「頂点まで達してしまったら、あとは下り坂」は、誰でもわかってることなのに。
 

 

 
子供達へ!

 
「大人のやり方」が気に喰わないんだったら、自分たちで道を切り開きなさい。自分達の「VMP」を作り、自分たちの「著作権管理会社」を作りなさい。今の「大人の機構」から逃れるには、それしかありません。TV番組は、ようつべ・ニコ動に流れます。でもTVではようつべ・ニコ動の映像の垂れ流し。どちらも、なあなあです。言ってることが立派な割には、やってることは最低です。でもそれをネットで騒いでも、黙殺されるだけです。ジジイどもの力は、現実には絶大ですよ。大人の作った「ボカロ」を使い、大人のつくった「音楽」を使い、大人の作った「ネット」で遊んでたら、出る杭は打たれます。自分たちの文化を言うなら、自分たちで作って下さい。私はひろゆき氏は大嫌いなんですが(笑)、彼はすごいでしょ?。彼の作った2chもニコ動も、大人は手をだせないでいるんです。彼の考えることそのものが、大人にとっては「想定外」。訴えられようがなにしようが、ひろゆき氏はのほほんとしてます。大人の作った法律では、彼にまで手が出せません。そこまでいけば、好き嫌いは別にして(爆)、認めざるえないんです。
 
ボカロは無くなりません。ただボカロに付随した「現行では違法なこと」は、すべて取り締まりの対象になります。ボカロを使った「自分の楽曲」「自分の演奏」でない限り、シャットアウトされるでしょう。
 
あなた達が、自分達で何らかの機構を作り、ボカロを守ったとします。でも、どこからも1円のお金も出ませんからね。あなた達が「音楽はタダ」にしたんですから。それだけは、覚えておいて下さい。ボカロの曲がどんなに売れようが著作権の協会を作ろうが販売しようが、あなたの周りの人・あなたの子供たちは、お金を出しません。今、あなたは音楽にお金を払うつもりはないでしょ?。それが繰り返されるだけです。その理屈が判らなければ、ただの「オモチャを取り上げられてダダをこねてる幼児」と同じです。
 

 
なんども言いますが「違法DL法」「VMP」「ACTA」そして「JASRAC」は、みんなおかしいです。一見正しそうに見えますが、それぞれにほころびそして矛盾があります。みんな「自分たちの利益」しかありません。ただそこで、たまたま全部の利害が一致しただけ。私もこれには、全て反対です。
 
ただし(笑)。ちゃんと著作権料は払われるべきです。今のあなた達若いコの理論も間違ってます。「音楽」は正統な対価を受け取って、活動するものです。どこにもなににも登録せず「手売り」でもかまわないと思います。でも、所得税は払わなければいけません。確定申告をしなくてはいけません。手売りして「正統な対価」を受取ったら、それに見合う税金を払わなければいけないということです。モノを売って税金は支払われないと、こんどは「国」というシステムが崩壊します。これはあなた達が大人になれば、スグにわかります。あとほんの数年で「売る側」の来ますから。「モノを売っても、お金が支払われない」ということがどういうことなのかは、スグに実感できます。
 
 
自分の楽曲を作って、自分で演奏を作って、ボカロの作品を作ってみて下さい。その努力に対価が支払われないということが、どういうことだかすぐ判ると思います。1曲出来上がるまで、ご飯を食べてもいけないし、買い物をしてもいけません。それは親が稼いだお金です。

「音楽で生活している人」は、みんなそうやって暮らしています。それに対して、お金を払うことは拒否し、なおかつ「使わせろ!」っていうのは・・・ちょっと違うと思います。

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