column 4


ジャンクへの道 その1


■オークションに気をつけて!

 

何がどこまで「ジャンク」なのか?

 

という定義は難しいですが、自分のギターを「改造したい」と思う人は、多いと思います。一番簡単なのが、ピックアップの交換。いや、厳密に言えば「簡単な改造」なんて無いんですが、「同じ規格のモノに取り替える」のは「改造の第一歩」であり、「ジャンク道の入り口」(笑)でもあります。

 

安いどうしようもないギターを、「使える」までに仕立て上げるのも、オークションでパーツを集めて組み込むのも、はては「素のパーツ」を一つずつ買い集め、塗装から組み立てまでしてしまうのも、みな同じだと私は思っています。


何が同じなのかというと、「ギターという規格」の中で、進んでいく話だからです。インチとミリの違いはあっても、「ギターの基本設計」は、決まってるんです。その「基本設計」からはみだしている所を、一つずつ直していくのが、「ジャンクギター再生」だと思います。


ただ「ジャンクギター再生」は、「個人の楽しみ」でもあり、なにも杓子定規に考える必要はないんですが・・・ネットで色々見てると、中には「やめて!」っていういじり方をしてる人がいて(笑)。もう少し、「ギターの基礎」について、学んで欲しいなと(笑)・・・思っちゃいます。ここまではいいけど、ここから先は「プロの領域」ってとこがあるわけで。どうしてもいじりたいときは、ほんの少しでいいから、基礎を学んで欲しい。やってもいいけど、結果、こうなっちゃうかもしれないという、漠然としたイメージでもあれば・・・(笑)。

 

まずオークションで、気になって気になってしょうがないことから書きます。それによって、「ハズレ」を引く人が、一人でも減ってくれれば、と思います。

 

「ネックはほぼ真っ直ぐで、弦高は1フレットで○ミリ、12フレットで×ミリ。トラスロッドの余りは△ミリあり、まだ余裕があります。」

 

・・・・・・?(笑)

  

オークションでよく見る、「売り文句」ですね。

 

これのドコが、おかしいの?

 

実は・・・全部です(爆)。こう書いてあるギターには、手を出さないほうが、賢明です。

「ギターを知らない人」のせりふです。

 

「トラスロッド」って、なんだか知ってますか?

 

この人達にきいたら間違いなく

 

「ネックのソリを直すもの!」

 

と答えるでしょう。

 

「えっ?違うの?」

 

っていう声が聞えてきます(笑)。違います。「トラスロッド」とは、

 

「ネックが反らないように入れてある、補強のための鉄芯」

 

です。ただネックは「反る」ことがあるんで、二次的な機能として、

 

「もしネックが反った時、ある程度は直せる機能」

 

が付随してるだけなんです。つまり・・・よいギターのネックは、反りません。メイプルの柾目一本棹で、キチンと乾燥してるものなら、反らない可能性のほうが、高いんです。 

 

「トラスロッドの余りは△ミリ・・・」

 

トラスロッドを動かしたということは、そのネックは既に「反った」ものです。そして

 

「余りは△ミリ・・・」・・・

 

どうやって確認したの?

ひょっとして・・・動かした?(笑)

 

せっかく真っ直ぐなネックのトラスロッドをいじるのは、ワザワザ故障の原因を作るようなものです。私のギターのなかでも「トラスロッド」をいじったのは、ホントに「ジャンク」なものだけで、FJなどほとんどのギターは、「反ったこと」すらありません。

つまり、上記のような書き方をされたギターは、

 

「ネックが反ったのを直したけど、また反る可能性があります。」

 

と言ってるのと同じです。ちゃんとしたものなら「ネックはほぼ真っ直ぐで、トラスロッドを回したことはありません。」が正解。



■「トラスロッドの正しい調整の仕方」(笑)

 

ただし、私はリペアーマンにお願いしています。その「微妙な作業」を見てると、とても私の手におえるものではありません。
トラスロッド・カバーを外し、そのギターに合う工具を用意します。通常は「レンチ」か、「ドライバー」ですね。「ネックの反り」を確認できる位置を、確保します。ヘッド側なら垂直にぶらさげ、上から見ると、大体確認できます。ただしこの「見方」は、「正しい反りの確認」ではありません。あくまで作業用です。フェンダーのように「ボディ側」にあるものは、水平を見られる長い、ステンレス定規などが必要です。この時「弦は張ったまま」が基本です。「普通にチューニングされた状態」で行います。ギターは、弦を張った状態で「設計」されてます。「普通にチューニングされた状態」が、バランスを取る基本です。

 

トラスロッドをほんの少し、角度にして1〜3度ぐらい動かし、ネックの様子を見ます。1度は極端ですが(笑)、ちゃんとしたトラスロッドなら、もうそれぐらいで、ネックが反応します。時間にして1分〜3分ぐらい。今動かした角度で、どのぐらい反りが動いたか、を確認します。トラスロッドに「圧力」が無く、スルスル回る場合は・・・とりあえず楽器屋さんへ(笑)。ネックの反りが順当に治ってるようなら、「必要な分」だけ、トラスロッドを回すんですが、くれぐれも、「少し回して、確認」して下さい。「あと1回、回せば直るかな?」というところまできたら、ストップ。少し時間をおいて下さい。なれたリペアーマンなら、「今は、もう少しだけど、24時間後には、これで真っ直ぐ!」という、「力加減」がわかってます。もしあなたがこの作業をするなら、くれぐれも「通り過ぎない」ように注意して下さい。「あと1回」の状態でチューニングしなおし、24時間後、「ネックの水平」を確認して下さい。できれば工具をあてて見るのが一番いいんですが、工具が無い場合、ギターを水平にし、ネックを「真横」から見られる状態で、一弦を1−5フレット、5−12フレット、12−20フレットを両側から指で押さえるて、その間の弦がフレットに対して一律の高さになっているかどうかで、簡易に判断できます。ネックを上から見たり、下から見たりして判断できるのは「プロ」だけです。「目の錯覚」や、「仕込み角」の問題もあるので、やめて下さい。っていうか、正確に判断は、できません。

長くなりましたが(笑)、もう一つ。「弦高は1フレットで・・・」。こんなもの、ブリッジをちょっと上下させれば、変わってしまいます。またナットが008用に、010の弦をつかったら、ナットの溝の一番下まで、弦は落ちません。従って正しい申告は、「ナット溝は010用に切ってあり、1弦の溝の高さが○ミリ。ナット自体の高さは△ミリ。現在12フレットで×ミリになるよう、ブリッジを設定しています。低めに設定してありますがこの状態で、ビビリはありません。ナットはオリジナルのままです。」こう書かれたら・・・、私も信用する(笑)。

 

追記

ネックっていえば・・・

「フィギア・メイプル」−いわゆる「トラ目」。「値段の高い、高級な木」っていうイメージがあるけど、別にきっちり作られたネックなら、トラ目なんかいらないんだよね。ギターを作る時、「設計者の意図」があっての「トラ目」なら、いいんだけど。

あんまり安いギターが、トラ目だらけなワケないじゃん(笑)。

 

コレ見てくれる。

 

かなりハデな「トラ目」なんだけど、これ、「フォト・フレーム・フィニッシュ」っていって、「トラ目のプリント」。一時期、ネックもボディもこの 「フォト・フレーム・フィニッシュ」のモデルがあったの。すごく、流行ったんだよね。テレキャスターもストラトキャスターもあったの。 塗装そのものが「プリント」のフィニッシュ。どんな「曲線」、「曲面」にも貼れる、超スグレモノの技術なんだけどね。これ、ぶつけて塗装が剥がれない限り、素人目にはわからないんで、気をつけてね。特に、取り外して「パーツだけ」にされると、なかなか判別がつかないから。 Fender Japanは、「フォト・フレーム・フィニッシュですよ。」っていって売ってるから、悪気はないんだけど。これ、間違いなく「オークション」に出品されてますよ(笑)。

 

あんまり「トラ目」を珍重しすぎるのも、考えもの・・・です。

 

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